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市民とつくる100年先も誇れるまちづくり


都市ブランド戦略『宇都宮プライド』プロジェクト

県庁所在地のような中核都市に位置づけられる都市においても、全国的な人口減少を受けた大都市での都市間競争などの影響から、地域活性化を模索する動きがみられるようになってきている。そのような地方都市の活性化策を関係者への取材を交え、順次レポートしていく予定であるが、第1回目は現在、栃木県宇都宮市で行われている都市ブランド戦略の現状についてレポートする。

多様な魅力と高いポテンシャルを備えた都市

 宇都宮といえば、日本一の消費量を誇る「餃子のまち」として広く知られるところであるが、そのほかにも日本チャンピオンのバーテンダーを何人も抱える「カクテルのまち」、また世界的サックスプレイヤーである渡辺貞夫氏の出身地としての「ジャズのまち」やアジア最高峰のロードレースといえるジャパンカップが行われる「自転車のまち」という側面もあり、他都市が羨むようないくつもの日本一に輝く冠を持つ恵まれている「まち」といえる。

 宇都宮は東京からおおよそ100kmと程よい距離にあり、便利さと自然が調和したとても暮らしやすいまちといわれる。実際、自然災害が少なく、フラットな関東平野に、高いレベルでバランスの取れた産業構造や前述のように独自性のある地域資源を数多く保有している。また、市町合併によって北関東初の50万都市となり、今後5年程度は引き続き人口増加が見込まれているなど多様な魅力と高いポテンシャルを備えている都市でもある。

 こうしたことを背景に、平成19年度に日経グローカルが実施した「全国都市サステナブル(持続可能)度調査」では、人口50万以上の都市の中で宇都宮市が第1位に評価されるなど、都市として高い評価を得てもいる。しかし、昨今の厳しい社会経済状況や今後ますます激化することが予想される都市間競争において生き残っていくために、そして100年先も持続可能な都市として発展し続けるために、「宇都宮ブランド戦略」というプロジェクトを始めることになったようだ。

 さて、ここでいう都市のブランドとは、一体どんなものだろう。宇都宮市総合政策部都市ブランド戦略室総括主査の篠原永知氏は「一度は訪れてみたい。宇都宮と聞いて、思い浮かぶものがいくつもあり、住んでいる人々には『誇り』を持ってもらうとともに、多くの人々に『憧れ』の対象として捉えてもらえるようになることです。宇都宮にずっと住みたい、宇都宮を訪れてみたい、将来住んでみたい、と思ってくれる人々が確実に増えていく、そうしたまちになっていくことです。」という。

三つのステップで進める宇都宮のブランド化

 宇都宮の「都市ブランド戦略(宇都宮プライド)」は、都市の魅力をつむぎ出し、そこに暮らす人々の誇りや自慢をつくっていく活動と定義されている。つまり、建物を含めた景観といったハードに限らず、祭りや飲食、自然などその都市で体感できるソフトに視点をおいた魅力を発見し、市民一人ひとりが市内外の人々に発信していく流れをつくることが、この活動の核心でもある。市民が愛着を抱く伝統や文化といったことのみならず、自分のまちを市民自らが発信し高めていくことこそ、まちのアイデンティなり個性を形成するといえる。

 さて、ブランドをつくり上げ、市内外に発信し、定着させていく一連の活動のことをブランディングというが、同市では平成20年3月に「第5次宇都宮市総合計画」を策定し、その中で「みんなに選ばれるまち」となるため、ブランディングの重要な取り組みとして「ブランドアップ戦略」に取り組むこととした。このブランド戦略が「宇都宮プライド」という都市のブランド化プロジェクトにつながった。

 「宇都宮プライド」の目的は、宇都宮市のイメージ、魅力を高め、市内の人が誇りを持って住み続け、さらに市外の人たちに対しても積極的に宇都宮市をアピールしている状態になること。そして、宇都宮市が「憧れを持って注目される都市」となり、認知度や魅力度が高まり、訪れたり、住んだり、あるいは企業が立地したくなる都市になることとしている。このことが、ひいては地域経済の活性化をはじめ、宇都宮全体に多くの相乗効果をもたらすことになる。

 過去に同市は、餃子やジャズなど個別の地域ブランドの構築や発信に務めてきたが、今回は、その魅力や良さを広く伝えるために、それら全体を「宇都宮」という都市ブランドとして一つに束ね、発信していくことが重要である。そこで、昨年3月に「宇都宮ブランド戦略指針」を策定し、「認知」、「信頼」、「愛着」の三つのステップにより、市内外の人や企業からの信頼・好感・期待を高めながら宇都宮らしい「まちの価値やイメージ」の確立を目指している。

ブランドメッセージ『住めば愉快だ宇都宮』の発信

ステップ1「認知」の年に位置づけた21年度の取り組みについては、まずインターネット上にホームページ「宮カフェ」(http://miyacafe.jp)を開設。ここでは、市内外の人たちが、宇都宮の魅力について考え、再発見する場として展開しており、「宇都宮プライド」の活動を支える創造ボランティアの活動結果報告や誰もが書き込めるブログなどがある。

 また、宇都宮が誇る地域の商品などを一堂に集め、その良さや素晴らしさを市内外の人たちにPRしていくために、オリオン通りにアンテナショップ「宮カフェ」をオープンした。1階が農産物やスイーツの販売のほか、名産品や地元プロスポーツチームのグッズなどが売られている。2階は、いつもジャズが流れカクテルを楽しめるビュッフェ形式のレストランとなっている。


そして、昨年10月に宇都宮のまちのイメージを分かりやすく伝えるための手段の一つとして、ブランドメッセージ『住めば愉快だ宇都宮』が決定し、ロゴも作成された。このメッセージは、多くの市民が参加するワークショップなどで市民自らが宇都宮について考え、語り合って導き出した「宇都宮らしさ」、つまり、宇都宮の生活拠点としての豊かさや楽しさを表現したものであり、どんどん愉快なまちになっていきたいという思いが込められている。ロゴカラーも暖色で、宇都宮の豊かな自然や食の楽しさ、人々の笑顔を表している。早速このフラッグもつくられ、宇都宮の『愉快』を広げるきっかけとするために、中心部の商店街に117本掲出した。

 餃子やジャズ、カクテルなどの個別のまちの資源は、すべて宇都宮を愉快で楽しいまちにするものなので、これからは『住めば愉快だ宇都宮』に乗せて一体的に発信し、宇都宮の魅力や価値を「認知」してもらうという。そのほか、宇都宮が誇る個別ブランドの筆頭である「餃子」と「ジャズ」に「カクテル」を題材に、三つの地域ブランドが市民の日常生活に溶け込んでいる様子を15秒に凝縮した「愉快CM」も制作された。この愉快CMは、ホームページ「宮カフェ」でも見ることができる。

徐々に市民にも浸透し、認知から信頼、愛着へ

 さて、こうした取り組みが行われて1年半が経過した。初年度は、1,200万円のPR予算に対し、広告代理店換算によれば10倍にも上る1億数千万円の効果があったとされる。様々なメディアに露出した結果、市外からのリアクションが多く、それもシティセールスに携わっているような人から注目を浴びているようだ。実際、自治体関係者の視察も頻繁で、篠原氏もセミナーなどの講師を依頼されることもあるようだ。一方で、市民の認知度などについては現在、官学連携により宇都宮大学の学生に質問項目や集計を依頼しているアンケート調査の来年春の結果が待たれることになるが、もちろん徐々に浸透も進んでいる。

 また、「宇都宮プライド」への市民参加というものをみると、ホームページのところでも触れたプロジェクトを支える創造ボランティアがいる。当初はブランドメッセージをつくるために宇都宮の魅力探しのパートナーとして募集され役目を終えたが、2月から個別の活動を再開させている。それは、中心部を流れる釜川のまち歩きチームや新撰組の土方歳三に因んだ歴史的史跡などを紹介するマップ制作のチームなどだ。メンバーには、今後も宇都宮の良さや魅力を発信していくための礎となっていく役割が期待されているが、個別活動ばかりではなく、全体活動についても復活させ、全体と個別の両輪の活動を行っていきたい意向。

 川崎や仙台などにおいても都市のブランド構築がシティセールスプロモーションの中に位置づけられているが、篠原氏は「宇都宮でも来年度は外へ向けての発信を担う本来の意味でのシティセールスについて真剣に考えたい」としている。まだはじまって1年半とはいえ、指針で示された5ヵ年計画の24年度までには、それほど時間が残されているわけではない。『愉快市民』と呼べるような市民サポーター制度や一緒に愉快にまちを盛り上げてくれる店など新たなアイデアも期待されるほか、市民が参加できる都市全体のさらなる発信が待たれるところだ。

(亀和田俊明)
2010年10月1日更新





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